KOF MAXIMAM IMPACT 2 O.S.T.

KOF登場10周年を記念して発売された前作から約2年、数々の新キャラ・新要素を盛り込み、KOFマキシマムインパクト(以下MI)が装いも新たに登場。
収録曲数は、KOF MI1 OST同様2枚組みながら、30曲から79曲に大増量です。
1枚目は主にゲーム本編で使用されている楽曲、2枚目はネオジオランドと呼ばれるステージで流れる、各キャラに割り当てられた既存曲が収録されております。
メインコンポーザーは前作から引き続いてスタジオアクアの田中敬一氏。*1
サウスタウンが舞台だった前作では、ダウンタウンらしい無国籍感あふれるサウンドが印象的でしたが、今作では、国際色豊かな背景の雰囲気に合わせた楽曲が多く、前作とは一味違うバラエティ性でゲームを演出。
KOF史上最高”との呼び声も高い前作の楽曲同様、今作もハイスピード・ハイテンション・ハイクオリティサウンドで新生KOF第2弾を彩っております。
特にステージ曲では、様々な音楽ジャンルのメロディをハードロック系のバッキングに載せるという手法で、ステージ背景の雰囲気と格闘ゲームのスピード感や激しさを両立させることに成功しており、同時に全体の楽曲の統一感も生みだすというデザインの巧みさも光ります。
そして、楽曲の端々に田中氏独特の節回し”でんちゅう節”の味付けが加わることで、MIシリーズならではの魅力を醸し出しているのではないでしょうか。

それでは前フリが長くなりましたが、ステージ曲を中心に、印象的な曲の感想を述べてまいりましょう。


KOF NEXT WARRIOR
RESONANCE-Tが担当するオープニングデモBGM。デモムービーに合わせるためにデリケートに調整された曲展開が巧み。曲単体で聴くとメロディ構成がやや単調に感じられてしまうかもしれませんが、ムービーとセットで聴く事でサウンドデザインの妙を感じられるのではないでしょうか。


太鼓男(War Memorialステージ)
尺八や笛、三味線、和太鼓といった日本的な音色のメロディに、バッキングのディストーションギターが加わることで、純邦楽とハードロックの融合が実現。Bメロからサビにかけて、メロディをリードするサウンドが女性ボイス→ギター→尺八とシフトしていく展開が情熱的で良いですね。間奏の和太鼓と三味線の渋いソロも、2ループ目のサウンドを引き立たせる上で見逃せない要素ですね。


パリの日本人(TOWER FESTIVALステージ)
アコーディオンとストリングスのメロディが何ともムーディーな、MIシリーズとしては珍しいタイプの曲ですね。小気味良く展開するリズムパートと哀愁を帯びたバッキングのアコースティックギターも、情緒的なメロディとのバランスが絶妙。
寂しげなピアノソロを挿入して流れに起伏をつけ、終盤に向けて一気に盛り上げる演出がニクイですなあ。
これは名曲。


回る像には福来る(Tenple of Ruinステージ)
背景である宗教・国籍不明の寺院に相応しい、アジアやアラブの民族音楽のエッセンスをミックスしたような、怪しげでエキゾチックな雰囲気が印象的。
曲のイメージからすると、夜ステージのテーマ曲かも知れませんね。
話は逸れますが、この曲のタイトルを知って初めて背景の偶像が回るということを知りました。


セレブな気持ち(FLEUR-DE-LISステージ)
バロック調のサウンドとハードロックテイストのバッキングのミックスが絶妙で、TV-CFでも使用されそうなスタイリッシュさが魅力。
メロディのストリングスを彩るチェンバロの音色が良いアクセントになっていて、リズミカルな曲展開に一役買っています。
クラシック系+ハードロック系というアレンジは割と一般的ですが、「セレブな気持ち」のようなクラシック風のサウンドがしっかりメインとして立っている曲は、意外と少ないのではないでしょうか。


てんぷら(KYOKUGEN DOJOステージ)
SNK格闘ゲームでは久々の登場となる極限流道場ステージ。「太鼓男」と同じく和風の楽曲ですが、「太鼓男」が祭囃子、「てんぷら」は雅楽というイメージが近いでしょうか。
厳粛な雰囲気を醸し出す雅楽とメタリックなバッキング、対照的な双方の持ち味を高い次元で融合したアレンジセンスは、流石の一言です。
ブリッジ部での邦楽器パートのソロが楽曲全体の空気を引き締めており、緊張感があって良いですね。


同じ穴の原住民(HUNTING CAVEステージ)
重厚なギターサウンドが冴え渡る、ヘヴィメタルなナンバー。
迫力のあるギターリフでボルテージが一気に高まるイントロが聴き所。まるでラルフの登場シーンのためだけに作られたかのようで、何とも熱いです。
原始的なボイスが効果的に挿入され、ワイルドな雰囲気が一層盛り上がりますね。


中華っぽい?(DRAGON'S LAIRステージ)
タイトルどおり、ステレオタイプな中華風イメージの曲ですが、香港映画風BGMの雰囲気も匂わせながら、ポップで賑やかなメロディとダンサブルなリズムで、非常にスタイリッシュ。
中華といえば、田中氏はレイジ・オブ・ザ・ドラゴンズでも「Splendid Strings From China」という曲を作曲されていますが、同じ”中華”というキーワードながら、MI2とは一味違うイメージの作品になっておりますので、聴き比べてみると中々興味深いものがありますね。


追憶の起動音(NEOGEO LANDステージ)
なんとネオジオの起動音ジングルを軽快なテクノポップにアレンジ。
5秒ほどのジングルを1分30秒以上の曲に膨らませるアレンジは実に面白いですね。
ジングルのフレーズをイントロやAメロ、サビ等でリフレインすることで、意識しなくても起動音のアレンジだと言うことが感じ取れるのが素晴らしい。
次回作ではネオジオCDの起動音アレンジを希望いたします*2


エンハンスド・カテゴリX(CYBER SPACEステージ)
田中氏にしては珍しい曲調のテクノ系ミックス。
特に格闘ゲームのステージ曲ではメロディアスな曲が多い田中氏の作品群の中では、異色な存在ではないでしょうか。
作風としては、レイジ・オブ・ザ・ドラゴンズの「Beat Out」に若干近いかも知れませんね。


あの森でセミ売るで(GRAND MOSQUEステージ)
一番最初に曲目を見た時、あまりの突拍子の無さに困惑しましたが、ライナーを観て「ああ、なるほど!」と妙に納得しましたね。*3曲名からどんどん歌詞を繋げて、1曲のボーカル曲にアレンジしてみるとか、夢は尽きません。
神秘的なメロディとバッキングの派手なオケヒットのコントラストが素晴らしく、ルイーゼのキャラクター性が良く現れた、ドラマティックな曲ではないでしょうか。


闇の爪にはマニキュアを(対ジヴァートマ戦)
前作のラスボス戦「5万人の鎮魂歌(レクイエム)」の流れを汲む、ラスボス戦BGMです。
威厳に満ちたオーケストラとコーラスで荘厳な雰囲気を保ちながら、ハードなバッキングのロックサウンドがドライブ感が演出し、そして一気にサビで”でんちゅ節”が炸裂する様子は、「ラスボス戦たる曲、かくあるべし!」という田中氏の意気込みが伝わってきそうな迫力があります。
名曲揃いのMIシリーズですが、これはまさに「ボス」という凄みのある曲ではないでしょうか。


快楽の石焼きビビンバ(ストーリーデモ)
、、、いや、なんというか、
この曲だけ豪血寺っぽいので、気になってしまって、、、(笑)


田中氏といえばユーモアの効いた曲目も魅力で、今作でも楽しいタイトルが目白押し。今回の特徴としては、「てんぷら」「憂愁のひきわり納豆」「モスクでモズク酢」など、食べ物関連のネーミングが多いという点ですね。
個人的に傑作だったのは、勝利デモの「一言多い」。前作の勝利デモも「一言どうぞ」というタイトルで、勝利したキャラがセリフを言うシーンを想像すれば、まさに”言い得て妙”。思わず膝を打ちたくなる秀逸さです。
キャラクターセレクトの「やっぱりカモ〜ン」というタイトルも田中氏の個性の表れで、MI2を始めとして前作やレイジ・オブ・ザ・ドラゴンズのキャラセレでも”Come on!”というボイスがミックスされており、今後も伝統となりそうな雰囲気ですね。


楽曲は素晴らしいのに、唯一残念だったのが、サントラCDの商品内容。
批判の多い1ループ収録、さらにインデックスには楽曲の使用箇所も記載されておらず、リスナーに厳しい対応だったことは否めません。
2枚目のネオジオランドBGMも、未CD化曲が数曲されているので資料的価値がないとは言えませんが、既存曲に圧迫されて本編BGMの収録時間が短くなるくらいなら、3枚組みにするかいっそのこと全曲カットしても良かったのではないかと思います。
次回作OSTの製作を担当する関係各社の皆様に置かれましては、何卒ご考慮くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。


今作では、「パリの日本人」「セレブな気持ち」といったストリングス系メインの曲や、「太鼓男」「てんぷら」といった邦楽系の曲が新たに登場し、MIサウンドワールドは広がるばかり。
今作もファンの期待を裏切らないハイクオリティサウンドで、インパクトを与えてくれました。
MI3のサウンドが、我々にどのような衝撃を与えてくれるのか、今から楽しみですね。


なんか纏まりの無い締めで申し訳ない。

*1:OP・ED曲のみRESONANCE-T

*2:無茶言うな

*3:まだ読んだ事がない方は、是非実際にライナーをご覧いただきたい。