THE KING OF FIGHTERS XI サウンドコレクション


さて、今回のKOF XI O.S.T.。
従来はアーケード用オリジナル版とコンシューマー用アレンジ版が別売りとなっておりましたが、今作では2枚組み1タイトルに纏まりました。
注目の作曲担当者は、元SNK新世界楽曲雑技団でKOFサウンドとしては'95から参加し、'96〜'2000ではメインを務めた"SHA-V"こと麻中秀樹氏が今回もメインで、同じく元新世界だった”まりも”氏(2曲)と”USAKO-X”氏(4曲)がスポット参加という顔ぶれで、KOF’99、2000を彷彿させるメンバー。KOFに続々と元新世界メンバーが復帰しており、ファンとしてはこのメンバーの名前を見ただけで嬉しくなってしまいます。
チームのイメージに合わせた軽快でメロディアス、そしてスピード感のある、SHA-V氏ならではのギターを前面に押し出したKOFサウンドが目白押し。全体的にハードなサウンドでドラマティックな展開に重点を置いていたTATE-NORIO氏・PAPAYA氏担当のKOF2003とは一味違う雰囲気ですね。
この2003とXIの音楽的な雰囲気の違いというのは、ムーディーな楽曲の多かったKOF'95から、スピード感・高揚感のある楽曲をメインにしたKOF'96にシフトした時と同じように感じたのですが、皆さんはいかがでしょうか。
それは、次に私が印象的だった曲を中心に感想を述べてみましょうか。


The King Of Fighters XI
まず目(耳?)を惹くのは、このタイトル曲です。
KOF2000を髣髴させるデジロック全開のイントロから、奔放かつハイテンションなギターのメロディが炸裂する展開が、早くも新次元のKOFを予感させ、何とも熱い。
初めてこの曲を聴いた時、30秒弱という時間に凝縮されたパワーと短いながらも確かに感じられるSHA-V節に、「遂に、待ち望んでいたKOFが帰ってきた・・・!」という感慨に耽ったものです。


・joker
主人公チームのテーマ曲。イントロ〜Bメロまでノイジィなサウンドのリフが展開され、サビでは待ってましたとばかりにギターが炸裂。新生KOFを印象付ける1曲ですね。曲展開がタイトル曲他数曲と通じるものがあり、「joker」がこのゲームのメインテーマともいえるかも知れませんね。


・After a long absence
極限流チームテーマ曲。イントロ・バッキングのアコースティック・ギターとパーカッションが醸し出すラテンジャズの雰囲気、そこに織り込まれた重厚なメロディは、長いKOFの歴史で培われたチームイメージそのままですね。イントロを聴いただけで「龍虎チームだ」と分かるくらい明確な曲調で、ある意味、ファンが一番安心して聴く事が出来るナンバーではないでしょうか。


・kiss or poison
餓狼MOWチームのテーマ曲。MOFのB・ジェニーをイメージしているのでしょうか、ムーディーで情熱的なラテン系ジャズでアプローチ。Bメロの軽快なピアノとサビの豪快なホーンズの対比、そしてバックで楽曲全体を引き締めるリズムパートが素晴らしいですね。是非生演奏のアレンジを聴いてみたいです。


・Smell of gunpowder
怒チームのテーマ曲。KOF XIのサウンドにおいて、ディストーションギターのヘビーでソリッドがサウンドがメインとなっているこの曲は異彩を放っておりますが、Bメロから徐々にテンポアップしながら、サビでXIならではのアップテンポでパワフルなメロディが展開する構成は、かなり熱いですね。
あくまで予想ですが、この曲はまりも氏の作曲でしょうか・・・?


・PURE〜at good old day〜
サイコソルジャー・チームのテーマ曲。小気味良いリズムで奏でられるピアノとシンセの音色が印象的な、ポップチューンの曲に仕上がっております。今回も従来のイメージどおりのポジティブかつ軽快なサウンドで、チームカラーをよく表していますね。
こちらもあくまで予想なんですが、USAKO-X氏の担当のような気がしてならないです。


・Secret Circumatances
エージェントチームのテーマ曲。アップテンポでパワフルな曲の多い今作にあって、シックで大人っぽく纏められた曲です。闘志むき出しという感じではない、チームならではの冷静な雰囲気が醸し出されていて良いですね。


KDD−0075
出ました、K'チームのテーマ曲。曲名、曲調ともに、'99・2000でも人気の高かったKDシリーズを意識したと思われる曲ですね。
イントロのノイジィなディストーションギター、バックに挿入されたサイレン風のSEからしてKDシリーズと言ってもいいクオリティ。しかしながら、メロディにはしっかりとSHA-V節が効かせてあって、KD〜の特徴を捉えながら新しく生まれ変わらせた、巧みなアレンジになっているのではないでしょうか。
旧新世界ファンにはぜひとも聴いていただきたい1曲。


NEW ORDER
京&庵チームのテーマ。これぞKOF!と言いたくなるような、熱いフレーズのオンパレード。KOF永遠の主人公・京の存在感を端的に示す曲ではないでしょうか。KOF'96以降のESAKAシリーズのイメージを築き上げたSHA-V氏の真骨頂ですね。イントロの雰囲気など、他の数曲と近い部分が感じられることから、「joker」と対を成すもう一つのテーマ曲といっても良いかもしれません。


今回のCDには、最近のコンシューマー版KOFに参加している高田耕至氏のアレンジ楽曲も収録されているのですが、こちらは原曲のイメージを最大限に尊重につつアレンジを加えております。
完成度の高い原曲を忠実にトレースしながら、アレンジならではのオリジナリティを加えるという作業は困難を極めると思われるのですが、そこはプロの手腕というべきか、詳しく聴き比べてみると非常に趣のあるアレンジになっております。
とくに興味深かったのはエージェントチームのアレンジで、バッキングのストリングスやブラスをスパイ映画風のダイナミックなアレンジにすることで、原曲のイメージが一段と膨らむ素晴らしい編曲になっているのではないでしょうか。


しかしながら、前述の「原曲のイメージを最大限に尊重につつ」という部分が足かせになっているせいか、一般ユーザーには違いが分かりにくいアレンジになっていることもまた事実。
原曲に忠実にしすぎるあまりアレンジャーの個性が発揮できず、その結果オリジナルとアレンジの差が分かりにくい物になってしまうと言うのは、アレンジを手がけるクリエイターにとって、ゲームなりCDなりを購入して音楽に触れるエンドユーザーにとって、不幸以外の何者でもないと思うのですが、いかがでしょうか。
個人的には、アレンジャー独自の解釈によるもっと個性的な編曲を楽しませてほしいですね。


そして、最大の問題点は、すべての楽曲が1ループ仕様ということ。
これまでにも、今作と同じ発売元サイトロンレーベルから以前に発売されたSNK関連のCDでは1ループ仕様の商品はありましたが、2年枚にリリースされたKOF2003は2ループ仕様でしたし、今作の収録時間はアーケード版オリジナルで50分強と、各チームのテーマ曲だけでも充分2ループ分とる時間はあったはず。
万が一、2ループ仕様で収録し切れなかった場合は、1枚目をオリジナル版(2ループ)、2枚目を1枚目で収録し切れなかった分+アレンジ版(1ループ)という構成も可能だったのではないでしょうか。
GMCDユーザーが一番敏感に反応するのが、「全曲収録」「2ループ録音」という部分ということは、老舗中の老舗サイトロン・レーベルなら分かっていたと思うのですが、、、。
次回以降の企画があるのでしたら、善処を望みたいですね。


まあ、最後は商品についての文句がかなり多くなりましたけれども、オリジナル・アレンジともに、楽曲そのものはこれ以上望めないくらいのクオリティを誇っております。
新世界解散から約5年、元新世界メンバーも続々復帰しているということで、XI以降のKOFサウンドも期待せざるを得ない、ってことでいいね?(←なぜかどうでしょう風)