KOF NEO WAVE アレンジトラックス〜コンシューマーーバージョン〜

KOF ネオウェイブの家庭用ハード移植版に収録されたアレンジバージョンBGMを収録した本作。
アレンジャーには、KOF2003でもアレンジを担当した相原"J99"隆行氏、主にTV番組等に楽曲を提供しているという高田耕至氏を起用。
元々ジャズ系サウンドを得意としている相原氏は、オリジナル曲のジャジーな部分をさらにジャズらしく、オールラウンダーの高田氏はギターをフィーチャーすることでよりアグレッシブに、と、両者の作風の違いが顕著に表れており、また、原曲とアレンジ版をよく聴き比べてみるとなかなか興味深いものがあります。
では、原曲とアレンジ版の相違を軸に、代表的な曲の感想を述べていきましょう。


・「RUN THROUGH」
ビブラフォンの音色が強めに、ブラスとドラムが若干控えめになったことで、バッキングのピアノが存在感を増していますね。そして、テンポも落とされたことで、アグレッシブなイメージの強い原曲とは対照的な落ち着いた雰囲気のアレンジになっています。
・「TECHNO RUNNER」
原曲では、豪快なホーンズとシリアスなストリングスがハードボイルドな雰囲気を醸し出していましたが、ASTではギターがメロディをリード。ジャジーな原曲の雰囲気を残しつつASTならではのオリジナリティが感じられる曲ではないでしょうか。
・「UNDERWATER」
何度聴いても、格闘ゲームというより横スクロールのシューティングゲームの印象が強い曲ですねえ。まあ、それは良いとして、原曲ではブラス系の音色だったメロディパートが、ASTではギターで演奏されており、ハードロックテイストが強くなりましたね。語弊があるのを承知でこの曲を例えるならば、シューティングゲームの楽曲をハードロック系ミュージシャンが演奏したような雰囲気、といった所でしょうか(我ながら頭の悪い例示ですな)。
・「THE DARK」
各パートのバランスに多少の違いが見られる程度で、原曲・アレンジ版の間に大きな差はないですね。あえて大きくアレンジを加えなかったのは、アレンジャーの判断でしょうか?
・「SPIRITS」
パーカッションやボイスの効果的な使用、神秘的なメロディでプリミティヴなイメージの強い原曲を、バッキングを控えめにしてリズムとメロディを強調することでシェイプアップし、より原曲の魅力を引き出すことに成功しているのではないでしょうか。評価に値するアレンジではないかと思います。
・「EDGE OF THE KNIFE」
楽曲の構成自体はさほど変わっていないものの、原曲では前面で主張しがちだったリズムパートを思い切ってシンプルにしたことで、ジャジーなの原曲のイメージが、さらに一歩ジャズに近くなったような印象を受けますね。ジャジーな曲調を得意とする相原氏にはお手の物、といったところでしょうか。このアレンジの雰囲気そのままに生演奏で収録されていたら、非常に濃厚な仕上がりになっていたことでしょう。
・「ARENA」
相原氏による他の楽曲のアレンジ同様、この曲に関しても、楽曲そのものを変えずに各パートのバランスを調整した結果、原曲のイメージを尊重しつつ違ったイメージの楽曲に再構成することに成功した作品、といえると思います。原曲よりもリズムパートを抑え、全体的にリバーブを控えめにしたことで、すっきりと聴きやすくなったのではないでしょうか。
・「BEYOND THE WALL」
エンディングの曲として、原曲ではブラスとストリングスが爽やかにメロディを奏でていますが、アレンジ版のメロディではサックスが渋く纏めています。アレンジ版のサックスは生演奏であればまた印象が違ってくるとは思いますが、ちょっとバッキングに対して浮いた感じが否めないのが残念でした。原曲とアレンジ版では印象が結構違うので、好みが分かれるかもしれませんね。


 全体として原曲に非常に忠実で、メロディや曲構成に大胆なアレンジがなされていないながらも、オリジナリティを出したアレンジをしているのは流石。
 ライナーノーツによると、オリジナル曲のスコアも提供されていたということなので、音源の流用ではなく、スコアから再現したことで、クリエイターの個性が反映されやすかったのではないかとも思われます。
 しかしながら、原曲に忠実なアレンジなので聴きやすい反面、もうちょっとアレンジに変化をつけて欲しかったのも事実。
 これまでのSNKプレイモア/サイト□ン作品の傾向からすると、アレンジャーには「原曲通りに」という要望がなされているようなので、メーカー側にもある程度アレンジャーの裁量に任せるような発注の仕方を検討して欲しいところです。
 原曲作曲者や元新世界メンバーがアレンジ参加していれば、ファンに対する訴求力はさらに高まったと思われるので、次回作ではその点も考慮して頂きたいですね。
8点。